遺伝子はダメなあなたを愛してる
![]() | 遺伝子はダメなあなたを愛してる (2012/03/30) 福岡伸一 商品詳細を見る ★★★★★ |
たしかに生命体は子孫を残すように作られています。しかしそれは生物としての義務ではありません。生き物には、繁殖に成功しないで一生を終える個体はたくさんいますが、子孫を残せなかった個体にも罰や不利益はありません。
ダメなあなた…え、私?なんてね。
なんてね。じゃないよ。私ダメなことばっかりしていて、最近それに拍車がかかって、しかもこの記事既に4回も消えて書きなおしていて、もう細木の数子にあんた死ぬわよ!!なんて突然言われても改名なんかせずに大人しく運命に従えそうな、そのくせスピリチュアルおじさんとか金髪ロングヘアおじさんの番組をTVで見ると胡散くせえって思ってしまうくらいダメなんです。そんなんでも愛してもらえるんスかね。
私は何を言っているのでしょう。
などと思いながら「生物と無生物のあいだ」を遠い昔に断念した私は本屋でこれをペラペラしていたんだよ。
そしたらカズオイシグロの話題があって、それだけでテンションがパアアなってね。
連載コラムみたいになっている中のその話だけ読んだ後、すぐにレジへ持って行きました。
「ゴキブリって絶滅した方がよくないですか?」「片づけられない女ってどう思います?」
日常生活の些細な疑問というか愚痴というか、そういうつぶやきに対してYESともNOとも答えない代わりに、ひとつお話をしてくれる。
これを読んでいるときの感じ、何かに似てるって思っていたんだけど、じいちゃんとお話しているときだ。(まだ53歳、とも思えないほどプリティなお顔立ちをしていらっしゃるのにごめんなさい福岡先生…)
例えば「冷えるとどうしてトイレが近くなるんですか?」という質問に、「昔、『リバー・ランズ・スルー・イット』というすばらしい映画がありました。」から始まるところとか。
おお、おおおおじいちゃん(まだ53歳ry)あの、私の質問聞いてました?などと失礼極まりないことを思いながら、だけど最後まで聞いたら答えはちゃんと自分の中に浮かび上がってきている。
生物学者だからか、福岡伸一だからかは分からないけれど、この人が生命に向けるまなざしには尊敬と謙虚さが込められていて、読んでいる私も周囲の生命に対して謙虚になれる。
いくつもの質問と答えを読むにつれて、生命に対して便利だとか迷惑だとか、うらやましいとか可哀想とか。そういうのは全部人間の側が意味づけしてるだけなんだよなあと感じるのだ。
そして、そのフェアな目線に置かれた上で、私自身の存在を肯定してもらっている気分になる。
産まれたからには自己実現!自己実現!みたいなことをしなくても、ただ生きているだけで許されるような気持ちになれるのでした。
宇宙人の話が好きです。
あとこの本は帯があった方がいいです。
とりあえず毎年ベランダの鳩と戦っている君は158ページを開いてみてはどうでしょう。
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